図で読む代数幾何 第1回

方程式の解を形として見る:アフィン代数的集合とイデアル

代数幾何は、多項式の方程式の解の集まりを「形」として調べる分野です。零点集合 V とイデアル I の定義から始めて、和集合と共通部分、イデアルが大きいほど形が小さくなる対応、既約成分、射影と消去までを、回せる立体図で確かめます。

  • 代数幾何
  • イデアル
  • 零点定理
  • 立体図

この記事の要点

扱うもの
多項式の方程式をみたす点の集まり(零点集合)です。代数幾何は、これを「形」として調べます。
2つの操作
式の集まりから形を作る VV と、形からそれを0にする式の全体を作る II です。式(イデアル)が大きくなるほど、形は小さくなります。
零点定理
係数の体が代数閉体なら、根基イデアルと形がちょうど1対1に対応します。和集合や共通部分、既約性、射影も、イデアルの言葉に翻訳できます。
図の見方
図には、具体的な形を計算して描いた「具体例」と、イデアルや写像のような抽象的な対象の関係を描いた「概念図」があります。どちらもドラッグで回せます。真上や正面から見ると平面の図になり、回すと奥行きに隠れていた構造が見えます。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

この連載について

「図で読む代数幾何」では、代数幾何の概念を一つずつ取り上げます。毎回、まず定義を書き、その定義が図の上で何を意味するかを確かめます。図には次の2種類があります。

  • 具体例特定の方程式の零点集合などを、定義どおりに計算して描いた図です。図の点が本文の方程式をみたしていることは、ページを作るときにプログラムで検算しています。
  • 概念図イデアル全体の集まりや写像 VV・II のような抽象的な対象は、座標をもたないので、そのままの形では描けません。概念図では、点・線・矢印がそれぞれどの数学的対象を表すかを先に決めてから描きます。点の位置そのものには意味がなく、意味をもつのは、どの点とどの点が結ばれているかと、どちらが上にあるかだけです。読み方は図ごとに説明します。

代数幾何の概念の多くは抽象的で、具体例の図だけでは描けません。この連載では2種類の図を両方使い、可換環論の命題のような抽象的な主張も、概念図の上で確かめます。

どちらの図もドラッグで回せ、ボタンを押すと決まった向きまで回ります。ある向きから見ると平面の図に見え、回すと奥行きに隠れていた構造が見える、という見方をこの連載では何度も使います。

前提にするのは、環とイデアルと剰余環の定義(大学の代数学の最初に習う範囲)です。

もう少し詳しくイデアルの記号の復習

環はすべて、単位元をもつ可換環とします。環 AA の部分集合 JJ がイデアルであるとは、和について閉じていて、AA の元を掛けても JJ に入ることです。

この記事では、イデアルを J,KJ,K のような大文字で書き、素イデアルは PP、極大イデアルは MM で表します。

  • f1,…,fmf_1,\dots,f_m が生成するイデアル:(f1,…,fm)={ g1f1+⋯+gmfm∣gi∈A }(f_1,\dots,f_m)=\{\,g_1f_1+\dots+g_mf_m \mid g_i\in A\,\}。
  • 和:J+K={ f+g∣f∈J, g∈K }J+K=\{\,f+g\mid f\in J,\ g\in K\,\}。
  • 積:JKJK は、積 fgfg(f∈J, g∈Kf\in J,\ g\in K)全体が生成するイデアル。
  • 共通部分 J∩KJ\cap K もイデアルで、JK⊆J∩KJK\subseteq J\cap K が成り立ちます。
  • P≠AP\neq A が素イデアルであるとは、fg∈Pfg\in P なら f∈Pf\in P または g∈Pg\in P となることです。M≠AM\neq A が極大イデアルであるとは、MM を真に含むイデアルが AA しかないことです。

A=k[x,y]A=k[x,y] で計算してみます。J=(x)J=(x)、K=(y)K=(y) なら

J+K=(x, y),JK=(xy),J∩K=(xy).J+K=(x,\ y),\qquad JK=(xy),\qquad J\cap K=(xy).

最後の等式は、xx と yy の両方で割り切れる多項式は xyxy で割り切れる、ということです。

JKJK と J∩KJ\cap K は一致するとは限りません。J=K=(x)J=K=(x) とすると

JK=(x2)⊊(x)=J∩KJK=(x^2)\subsetneq(x)=J\cap K

です。xx は x2x^2 の倍数ではないからです。

素イデアルかどうかは剰余環で判定できます。PP が素イデアルであることと A/PA/P が整域であること、MM が極大イデアルであることと A/MA/M が体であることは、それぞれ同値です。例えば

k[x,y]/(x)≅k[y],k[x,y]/(x, y)≅kk[x,y]/(x)\cong k[y],\qquad k[x,y]/(x,\ y)\cong k

なので、(x)(x) は素イデアル、(x,y)(x,y) は極大イデアルです。

零点集合:方程式から形を作る

体 kk を一つ固定します。nn 変数の多項式環を k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] と書きます。

定義1 アフィン空間と零点集合 [1, §I.1, p.2]

An=kn\mathbb{A}^n=k^n を nn 次元のアフィン空間と呼ぶ。多項式の集合 S⊆k[x1,…,xn]S\subseteq k[x_1,\dots,x_n] に対して、すべての f∈Sf\in S について f(a)=0f(a)=0 となる点 aa の集合

V(S)={ a∈An∣f(a)=0  (f∈S) }V(S)=\{\,a\in\mathbb{A}^n \mid f(a)=0\ \ (f\in S)\,\}

を SS の零点集合と呼ぶ。ある SS を使って V(S)V(S) と書ける An\mathbb{A}^n の部分集合を、アフィン代数的集合と呼ぶ。

V(S)V(S) は、SS の式を連立方程式とみたときの解の全体です(参考文献のハーツホーン『代数幾何学』では、V(S)V(S) を Z(S)Z(S) と書いています)。V({f,g})V(\{f,g\}) は V(f,g)V(f,g) のように略して書きます。

いくつか計算してみます。まず1変数(n=1n=1)では、0でない多項式の零点集合は根の集合なので、有限集合です。

V(x2−1)={1, −1},V((x−a1)(x−a2)⋯(x−am))={a1,…,am}.\begin{gathered} V(x^2-1)=\{1,\ -1\},\\ V\big((x-a_1)(x-a_2)\cdots(x-a_m)\big)=\{a_1,\dots,a_m\}. \end{gathered}

2つ目の式から、A1\mathbb{A}^1 の有限集合はどれもアフィン代数的集合です。両極端として V(0)=A1V(0)=\mathbb{A}^1 と V(1)=∅V(1)=\varnothing もあります。

2変数では、式1つで曲線、式2つで(多くの場合)有限個の点ができます。例えば k=Rk=\mathbb{R} なら、V(x2+y2−1)V(x^2+y^2-1) は原点を中心とする半径1の円です。

V(x2+y2−1)={ (cos⁡θ, sin⁡θ)∣0≤θ<2π }.V(x^2+y^2-1)=\{\,(\cos\theta,\ \sin\theta)\mid 0\leq\theta<2\pi\,\}.

例2 円と直線の交点

k=Rk=\mathbb{R} または C\mathbb{C} とする。A2\mathbb{A}^2 で

V(x2+y2−1, x−y)={(12, 12), (−12, −12)}.V(x^2+y^2-1,\ x-y)=\left\{\left(\tfrac{1}{\sqrt2},\ \tfrac{1}{\sqrt2}\right),\ \left(-\tfrac{1}{\sqrt2},\ -\tfrac{1}{\sqrt2}\right)\right\}.
証明
  1. 2つ目の式から y=xy=x。これを1つ目の式に代入して xx を求める。
    x2+y2−1=x2+x2−1=2x2−1=0⟺x=±12.x^2+y^2-1=x^2+x^2-1=2x^2-1=0 \quad\Longleftrightarrow\quad x=\pm\frac{1}{\sqrt2}.
  2. y=xy=x なので、点は (12,12)\left(\tfrac{1}{\sqrt2},\tfrac{1}{\sqrt2}\right) と (−12,−12)\left(-\tfrac{1}{\sqrt2},-\tfrac{1}{\sqrt2}\right) の2つ。逆にこの2点は2つの式をどちらもみたす。

ただし、式1つでいつも曲線ができるとは限りません。k=Rk=\mathbb{R} のとき、V(x2+y2)⊆A2V(x^2+y^2)\subseteq\mathbb{A}^2 は式1つですが、原点1点だけです。C\mathbb{C} の上では x2+y2=(x+iy)(x−iy)x^2+y^2=(x+iy)(x-iy) と分解するので、V(x2+y2)V(x^2+y^2) は2本の直線 V(x+iy)V(x+iy) と V(x−iy)V(x-iy) の和集合になります。空間 A3\mathbb{A}^3 で同じ式を見た場合は、この節の最後の補足で扱います。

3次元の空間 A3\mathbb{A}^3 で式を1つだけ課すと、多くの場合、曲面ができます。

ドラッグで回せます

z=0z=0 をみたす点の全体。x,yx,y は自由に動けるので平面になります。

原点からの距離が1の点の全体、つまり球面です。

x2+y2=z2x^2+y^2=z^2 は、高さ zz での断面が半径 ∣z∣|z| の円になる二重の円錐です。原点だけは、まわりと様子が違う点です(特異点。連載の後の回で扱います)。

高さ z=xyz=xy の曲面で、馬の鞍の形をしています。xx 軸と yy 軸を丸ごと含みます。

図1具体例式1つの零点集合 V(f)⊆A3V(f)\subseteq\mathbb{A}^3。ボタンで式を切り替えられます。平面・球面・円錐・鞍面はどれも、ある多項式 f(x,y,z)f(x,y,z) が0になる点の全体です。

図1の4つの曲面は、順に次の零点集合です。

V(z),V(x2+y2+z2−1),V(x2+y2−z2),V(z−xy).V(z),\qquad V(x^2+y^2+z^2-1),\qquad V(x^2+y^2-z^2),\qquad V(z-xy).

式から形の性質を読み取れます。円錐 V(x2+y2−z2)V(x^2+y^2-z^2) を高さ z=cz=c の平面で切ると、断面は

V(x2+y2−z2, z−c)={ (x,y,c)∣x2+y2=c2 }V(x^2+y^2-z^2,\ z-c)=\{\,(x,y,c)\mid x^2+y^2=c^2\,\}

で、k=Rk=\mathbb{R} なら半径 ∣c∣|c| の円です(c=0c=0 では原点1点)。

鞍面 V(z−xy)V(z-xy) は xx 軸と yy 軸を丸ごと含みます。xx 軸の点 (t,0,0)(t,0,0) を代入すると 0−t⋅0=00-t\cdot0=0 になり、yy 軸の点 (0,t,0)(0,t,0) でも同じだからです。

An\mathbb{A}^n を「アフィン空間」と呼ぶのは、ベクトル空間 knk^n の原点や足し算を使わず、点の集まりとしてだけ扱うためです。原点もほかの点と同じ扱いで、座標を平行移動すると、零点集合は平行移動した多項式の零点集合に移ります。

式で書くと次のとおりです。c∈knc\in k^n だけずらす写像を τc(a)=a+c\tau_c(a)=a+c とすると

τc(V(f))=V(f(x1−c1, …, xn−cn)).\tau_c\big(V(f)\big)=V\big(f(x_1-c_1,\ \dots,\ x_n-c_n)\big).

点 bb が左辺に入るのは f(b−c)=0f(b-c)=0 のときで、これは右辺の多項式が bb で0になることと同じだからです。例えば単位円 V(x2+y2−1)V(x^2+y^2-1) を xx 方向に1ずらすと、V((x−1)2+y2−1)=V(x2−2x+y2)V\big((x-1)^2+y^2-1\big)=V(x^2-2x+y^2) になります。

もう少し詳しく図は実数の点だけを描いている

このあと出てくる零点定理は、kk が代数閉体(定数でない1変数多項式が必ず根をもつ体。例えば複素数体 C\mathbb{C})のときに成り立ちます。そのため、代数幾何では k=Ck=\mathbb{C} のような体を考えるのが基本です。

ところが C3\mathbb{C}^3 は実数で数えると6次元あり、そのままでは描けません。この連載の図は、C\mathbb{C} 上の零点集合のうち、座標がすべて実数の点(実数点)だけを描いたものです。

実数点だけを見ると、見落とすものがあります。

  • V(x2+y2+z2+1)V(x^2+y^2+z^2+1) は実数点を1つももちませんが、C3\mathbb{C}^3 の中では (i,0,0)(i,0,0) などを含む曲面です。
  • A3\mathbb{A}^3 の中の V(x2+y2)V(x^2+y^2) の実数点は zz 軸だけですが、C\mathbb{C} 上では x2+y2=(x+iy)(x−iy)x^2+y^2=(x+iy)(x-iy) と分解するので、2枚の平面 V(x+iy)V(x+iy) と V(x−iy)V(x-iy) の和集合です。

この記事の図には、どれも実数点を見るだけで全体の様子が分かる例を選んでいます。

式を増やすと形は小さくなる

連立方程式の式を増やすと、条件が厳しくなるので、解は減ります。また、f=0f=0 と g=0g=0 が成り立つ点では、f+g=0f+g=0 や xf=0x f=0 も成り立ちます。この2つを書いたのが次の命題です。

命題3 [1, p.2; 1, 命題1.2 (a), p.4]

(1) S⊆TS\subseteq T なら V(T)⊆V(S)V(T)\subseteq V(S)。
(2) SS が生成するイデアルを (S)(S) とすると、V(S)=V((S))V(S)=V\big((S)\big)。

証明
  1. (1) TT の式がすべて0になる点では、その一部である SS の式も0になる。
  2. (2) まず V((S))⊆V(S)V((S))\subseteq V(S) を示す。S⊆(S)S\subseteq(S) なので (1) から従う。
  3. 次に V(S)⊆V((S))V(S)\subseteq V((S)) を示す。(S)(S) の元は SS の元に多項式を掛けて足したものなので、SS の式がすべて0になる点で0になる。

    a∈V(S)a\in V(S) とし、f∈(S)f\in(S) を任意に取る。生成されるイデアルの定義から、f=g1f1+⋯+gmfmf=g_1f_1+\dots+g_mf_m(fi∈Sf_i\in S、gi∈k[x1,…,xn]g_i\in k[x_1,\dots,x_n])と書ける。各 fi(a)f_i(a) は0なので

    f(a)=g1(a)f1(a)+⋯+gm(a)fm(a)=0.f(a)=g_1(a)f_1(a)+\dots+g_m(a)f_m(a)=0.

    ff は (S)(S) の任意の元だったので、a∈V((S))a\in V((S))。

(1) は、包含の向きを逆にする対応として書けます。

S⊆T⟹V(S)⊇V(T).S\subseteq T\quad\Longrightarrow\quad V(S)\supseteq V(T).

(2) から、零点集合を考えるときは、式の集合の代わりにイデアルだけを考えれば十分だと分かります。見かけの違う式の組でも、生成するイデアルが同じなら、零点集合も同じです。

例4 生成元を取り替える

k[x,y,z]k[x,y,z] で (y−x2, z−x3)=(y−x2, z−xy)(y-x^2,\ z-x^3)=(y-x^2,\ z-xy)。したがって

V(y−x2, z−x3)=V(y−x2, z−xy).V(y-x^2,\ z-x^3)=V(y-x^2,\ z-xy).
証明
  1. 右辺の生成元 z−xyz-xy が左辺のイデアルに入ることを、式で示す。
    z−xy=(z−x3)−x (y−x2).z-xy=(z-x^3)-x\,(y-x^2).

    y−x2y-x^2 は両辺に共通なので、右辺のイデアルは左辺に含まれる。

  2. 逆に、左辺の生成元 z−x3z-x^3 が右辺のイデアルに入る。
    z−x3=(z−xy)+x (y−x2).z-x^3=(z-xy)+x\,(y-x^2).
  3. イデアルが一致するので、命題3(2) から零点集合も一致する。

左辺は「y=x2y=x^2、z=x3z=x^3」、右辺は「y=x2y=x^2、z=xyz=xy」という連立方程式です。y=x2y=x^2 を z=xyz=xy に代入すると z=x3z=x^3 になるので、2つは同じ連立方程式です。この組は、最後の節で扱うねじれ3次曲線を定めています。

さらにヒルベルトの基底定理により、k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] のイデアルはどれも有限個の元で生成されます[2, 定理7.5, p.124; 2, 系7.6, p.125; 3, 定理3.6, p.56]。したがって、どんなアフィン代数的集合も、有限個の式で定義できます。

無限個の式を課しても、イデアルは有限個で生成されます。例えば k[x,y]k[x,y] で S={xy, x2y, x3y, … }S=\{xy,\ x^2y,\ x^3y,\ \dots\} とすると、どの元も xyxy の倍数 xmy=xm−1⋅xyx^m y=x^{m-1}\cdot xy なので

(S)=(xy),V(S)=V(xy)=V(x)∪V(y)(S)=(xy),\qquad V(S)=V(xy)=V(x)\cup V(y)

となり、2本の座標軸を合わせたものです(最後の等号は次の節の命題5(2))。

図2は、イデアルを1段ずつ大きくしたときの零点集合です。イデアルの包含の向きと、形の包含の向きが逆になっていることが分かります。

(0)⊂(x)⊂(x,y)⊂(x,y,z)↓V↓V↓V↓VA3⊃V(x)⊃V(x,y)⊃{(0,0,0)}\begin{array}{ccccccc} (0) & \subset & (x) & \subset & (x,y) & \subset & (x,y,z) \\ \big\downarrow{\scriptstyle V} & & \big\downarrow{\scriptstyle V} & & \big\downarrow{\scriptstyle V} & & \big\downarrow{\scriptstyle V} \\ \mathbb{A}^3 & \supset & V(x) & \supset & V(x,y) & \supset & \{(0,0,0)\} \end{array}

上の段は式を1つずつ足していく列で、下の段はそれに応じて、空間全体、平面 x=0x=0、zz 軸、原点と小さくなっていく列です。

ドラッグで回せます

J=(0)J=(0)。どの点でも 0=00=0 なので、V(0)=A3V(0)=\mathbb{A}^3(空間全体)です。

J=(x)J=(x)。条件 x=0x=0 を課すと、yzyz 平面に縮みます。

J=(x,y)J=(x,y)。さらに y=0y=0 を課すと、zz 軸だけが残ります。

J=(x,y,z)J=(x,y,z)。3つとも0になるのは原点だけです。式(イデアル)が大きくなるほど、形は小さくなります。

図2具体例イデアルの列 (0)⊂(x)⊂(x,y)⊂(x,y,z)(0)\subset(x)\subset(x,y)\subset(x,y,z) と、その零点集合の列 A3⊃V(x)⊃V(x,y)⊃{0}\mathbb{A}^3\supset V(x)\supset V(x,y)\supset\{0\}。左のイデアルほど式が少なく、形は大きくなります。

和集合と共通部分

形どうしの共通部分や和集合も、また零点集合になります。対応するイデアルの操作は次のとおりです。

命題5 [1, 命題1.1, p.2]

J,KJ,K と JλJ_\lambda(λ∈Λ\lambda\in\Lambda)を k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] のイデアルとする。

(1) V(J)∩V(K)=V(J+K)V(J)\cap V(K)=V(J+K)。より一般に ⋂λV(Jλ)=V(∑λJλ)\bigcap_\lambda V(J_\lambda)=V\big(\sum_\lambda J_\lambda\big)。
(2) V(J)∪V(K)=V(JK)=V(J∩K)V(J)\cup V(K)=V(JK)=V(J\cap K)。
(3) V(0)=AnV(0)=\mathbb{A}^n、V(1)=∅V(1)=\varnothing。

証明
  1. (1) 和 ∑λJλ\sum_\lambda J_\lambda の元は各 JλJ_\lambda の元の有限和なので、「和のすべての元が0」と「すべての JλJ_\lambda のすべての元が0」は同じ条件である。
    1. ⋂λV(Jλ)⊆V(∑λJλ)\bigcap_\lambda V(J_\lambda)\subseteq V(\sum_\lambda J_\lambda):点 aa で各 JλJ_\lambda の元が0なら、それらの有限和 f1+⋯+fmf_1+\dots+f_m も aa で0。
    2. V(∑λJλ)⊆⋂λV(Jλ)V(\sum_\lambda J_\lambda)\subseteq\bigcap_\lambda V(J_\lambda):各 JλJ_\lambda は和に含まれるので、命題3(1) から従う。
  2. (2) まず V(J)∪V(K)⊆V(J∩K)⊆V(JK)V(J)\cup V(K)\subseteq V(J\cap K)\subseteq V(JK) を示す。イデアルの包含 JK⊆J∩K⊆JJK\subseteq J\cap K\subseteq J を 命題3(1) で逆向きにすればよい。
    1. JK⊆J∩KJK\subseteq J\cap K を確かめる。

      JKJK は積 fgfg(f∈J, g∈Kf\in J,\ g\in K)で生成される。fgfg は ff の倍数なので JJ に入り、gg の倍数なので KK にも入る。J∩KJ\cap K はイデアルなので、生成元をすべて含めば、それらが生成するイデアル全体も含む。

    2. J∩K⊆JJ\cap K\subseteq J と 命題3(1) から V(J)⊆V(J∩K)V(J)\subseteq V(J\cap K)。KK についても同じなので V(J)∪V(K)⊆V(J∩K)V(J)\cup V(K)\subseteq V(J\cap K)。
    3. JK⊆J∩KJK\subseteq J\cap K と 命題3(1) から V(J∩K)⊆V(JK)V(J\cap K)\subseteq V(JK)。
  3. 残りは V(JK)⊆V(J)∪V(K)V(JK)\subseteq V(J)\cup V(K)。V(JK)V(JK) の点のうち V(J)V(J) に入らないものが V(K)V(K) に入ることを示す。

    a∈V(JK)a\in V(JK)、a∉V(J)a\notin V(J) とする。

    1. a∉V(J)a\notin V(J) なので、f(a)≠0f(a)\neq0 となる f∈Jf\in J がある。
    2. 任意の g∈Kg\in K について fg∈JKfg\in JK なので、f(a)g(a)=0f(a)g(a)=0。
    3. f(a)≠0f(a)\neq0 なので g(a)=0g(a)=0。よって a∈V(K)a\in V(K)。

      kk は体なので、0でない f(a)f(a) には逆元がある。f(a)g(a)=0f(a)g(a)=0 の両辺に f(a)−1f(a)^{-1} を掛けると g(a)=0g(a)=0。

  4. (3) 定数0はどの点でも0になり、定数1はどの点でも0にならない。
ドラッグで回せます

共通部分 V(J)∩V(K)=V(J+K)V(J)\cap V(K)=V(J+K)。2つの式を両方みたす点で、高さ 12\tfrac12、半径 32\tfrac{\sqrt3}{2} の円になります。

和集合 V(J)∪V(K)=V(JK)V(J)\cup V(K)=V(JK)。積 (x2+y2+z2−1)(z−12)(x^2+y^2+z^2-1)(z-\tfrac12) が0になる点は、どちらかの因子が0になる点です。

図3具体例J=(x2+y2+z2−1)J=(x^2+y^2+z^2-1)(球面)と K=(z−12)K=(z-\tfrac12)(平面)。共通部分は2つの式を並べたイデアル J+KJ+K の零点集合、和集合は2つの式を掛けたイデアル JKJK の零点集合です。

共通部分は「両方の式をみたす」ことなので、式を並べる(イデアルの和をとる)と得られます。

図3の共通部分を計算してみます。J+KJ+K の生成元から zz を消すと、円の式が出てきます。

(x2+y2+z2−1)−(z+12)(z−12)=x2+y2+z2−1−(z2−14)=x2+y2−34.\begin{aligned} (x^2+y^2+z^2-1)-\big(z+\tfrac12\big)\big(z-\tfrac12\big) &=x^2+y^2+z^2-1-\big(z^2-\tfrac14\big)\\ &=x^2+y^2-\tfrac34. \end{aligned}

左辺は J+KJ+K の元の組み合わせなので、右辺も J+KJ+K に入ります。逆に、球面の式は右辺と z−12z-\tfrac12 の倍数の和に戻せるので、

J+K=(x2+y2+z2−1, z−12)=(x2+y2−34, z−12).J+K=\big(x^2+y^2+z^2-1,\ z-\tfrac12\big)=\big(x^2+y^2-\tfrac34,\ z-\tfrac12\big).

よって k=Rk=\mathbb{R} なら、V(J)∩V(K)V(J)\cap V(K) は、高さ 12\tfrac12 の平面にある半径 32\tfrac{\sqrt3}{2} の円です。

和集合は「どちらか一方の式をみたす」ことです。体の元どうしは、積が0なら一方が0なので、点 aa で f(a)g(a)=0f(a)g(a)=0 となることは f(a)=0f(a)=0 または g(a)=0g(a)=0 と同じです。そのため、式を掛け合わせると和集合が得られます。

図3では JKJK は1つの式で生成され、その式は2つの式の積です。

JK=((x2+y2+z2−1)(z−12)).JK=\Big((x^2+y^2+z^2-1)\big(z-\tfrac12\big)\Big).

命題5(2) では JKJK と J∩KJ\cap K が同じ零点集合を与えますが、イデアルとしては違うことがあります。k[x,y]k[x,y] で J=(x)J=(x)、K=(x,y)K=(x,y) とすると、

JK=(x2, xy)⊊(x)=J∩K,V(JK)=V(J∩K)=V(x).JK=(x^2,\ xy)\subsetneq(x)=J\cap K,\qquad V(JK)=V(J\cap K)=V(x).

K⊇JK\supseteq J なので J∩K=JJ\cap K=J です。形の側でも、V(K)={(0,0)}V(K)=\{(0,0)\} は直線 V(x)V(x) に含まれるので、和集合は V(x)V(x) のままです。

x∉(x2,xy)x\notin(x^2,xy) は、(x2,xy)(x^2,xy) の元がどれも2次以上の項しかもたないことから分かります。

和集合の例を一つ見ます。A3\mathbb{A}^3 の中の V(xz, yz)V(xz,\ yz) です。イデアル (xz,yz)(xz,yz) は (z)(z) と (x,y)(x,y) の積です。

(z)(x, y)=(z⋅x, z⋅y)=(xz, yz).(z)(x,\ y)=(z\cdot x,\ z\cdot y)=(xz,\ yz).

積のイデアルは生成元どうしの積で生成されるからです。よって命題5(2) より

V(xz, yz)=V(z)∪V(x,y)V(xz,\ yz)=V(z)\cup V(x,y)

となります。

直接確かめることもできます。z≠0z\neq0 の点では、xz=0xz=0 と yz=0yz=0 から x=y=0x=y=0 が出ます。z=0z=0 の点では、2つの式はどちらも0です。

つまり V(xz,yz)V(xz,yz) は、平面 z=0z=0 と zz 軸を合わせたものです。

ドラッグで回せます

斜めから見ると、平面 V(z)V(z) と、それを垂直に貫く直線 V(x,y)V(x,y)(zz 軸)の和集合だと分かります。

真上から見ると、直線は原点の1点に重なり、平面に隠れます。平面 V(z)V(z) だけに見えますが、それは全体ではありません。

真横から見ると、平面は横一本の線に、直線は縦の線に見え、十字になります。これも全体ではありません。

図4具体例V(xz,yz)V(xz,yz)。「真上」を押すと、zz 軸は原点の1点に重なって平面に隠れ、平面 V(z)V(z) だけが見えます。「真横」では十字に見えます。どちらの平面の図も、もとの形の一部しか表していません。

和集合の公式を1変数で使うと、有限集合の式が出てきます。

V(x−1)∪V(x−2)∪V(x−3)=V((x−1)(x−2)(x−3))={1, 2, 3}.V(x-1)\cup V(x-2)\cup V(x-3)=V\big((x-1)(x-2)(x-3)\big)=\{1,\ 2,\ 3\}.

一方、無限個の零点集合の和集合は、零点集合になるとは限りません。例えば k=Ck=\mathbb{C} のとき、A1\mathbb{A}^1 の中の整数全体は1点の無限個の和集合

Z=⋃m∈ZV(x−m)\mathbb{Z}=\bigcup_{m\in\mathbb{Z}}V(x-m)

ですが、零点集合ではありません。0でない1変数多項式の根は有限個しかないので、Z\mathbb{Z} を含む零点集合は V(0)=A1V(0)=\mathbb{A}^1 だけだからです。

共通部分のほうは、無限個でも命題5(1) が使えます。例えば A2\mathbb{A}^2 で V(y−mx)V(y-mx)(原点を通る傾き mm の直線)をすべての m∈km\in k について交わらせると、

⋂m∈kV(y−mx)=V( (y−mx∣m∈k) )=V(x, y)={(0,0)}\bigcap_{m\in k}V(y-mx)=V\big(\,(y-mx\mid m\in k)\,\big)=V(x,\ y)=\{(0,0)\}

です。m=0m=0 の生成元 yy と、m=0,1m=0,1 の生成元の差 (y−0⋅x)−(y−x)=x(y-0\cdot x)-(y-x)=x がイデアルに入るからです。

専門的な話ザリスキー位相

命題5から、アフィン代数的集合の全体は「空集合と全体を含み、有限個の和集合と任意個の共通部分で閉じている」ことが分かります。これは閉集合の公理そのものなので、アフィン代数的集合を閉集合とする位相が An\mathbb{A}^n に入ります。これをザリスキー位相と呼びます[1, §I.1 定義, p.3]。

kk が無限体なら、A1\mathbb{A}^1 の閉集合は有限集合と全体だけです[1, 例1.1.1(k が<span class="term" tabindex="0" data-term="algebraically-closed">代数閉体</span>の場合), p.3]。開集合は「有限個の点を除いた残り」なので、空でない開集合どうしは必ず交わります。

普段の距離の位相とはまったく違うこの位相は、スキームを扱う回でもう一度詳しく見ます。

形から式へ:部分集合のイデアル

ここまでは式から形を作りました。逆向きに、形から式の集まりを作ります。

定義6 部分集合のイデアル [1, §I.1, p.4]

部分集合 X⊆AnX\subseteq\mathbb{A}^n に対して、すべての a∈Xa\in X で f(a)=0f(a)=0 となる多項式 ff の集合

I(X)={ f∈k[x1,…,xn]∣f(a)=0  (a∈X) }I(X)=\{\,f\in k[x_1,\dots,x_n]\mid f(a)=0\ \ (a\in X)\,\}

と定める。また、ある m≥1m\geq1 で fm∈Jf^m\in J となる ff の全体を、イデアル JJ の根基と呼んで J\sqrt{J} と書き、J=J\sqrt{J}=J となるイデアルを根基イデアルと呼ぶ。

根基をいくつか計算してみます。k[x,y]k[x,y] で

(x2)=(x),(x2, xy)=(x),(x2, y3)=(x, y).\sqrt{(x^2)}=(x),\qquad \sqrt{(x^2,\ xy)}=(x),\qquad \sqrt{(x^2,\ y^3)}=(x,\ y).

どの例でも、左辺に x2x^2 や y3y^3 が入っているので、xx や yy は根基に入ります。よって右辺は左辺の根基に含まれます。

逆向きは、右辺が素イデアルで左辺を含むことから分かります(素イデアル PP が JJ を含むと、fm∈J⊆Pf^m\in J\subseteq P から f∈Pf\in P となるので J⊆P\sqrt{J}\subseteq P)。

I(X)I(X) の簡単な例として、I(∅)=k[x1,…,xn]I(\varnothing)=k[x_1,\dots,x_n] です(条件が空なので、どの多項式も入る)。kk が無限体なら I(An)=(0)I(\mathbb{A}^n)=(0) で、これはすべての点で0になる多項式は0だけ、ということです。

例7 1点のイデアル

どんな体 kk でも、A2\mathbb{A}^2 の点 (a,b)(a,b) について

I({(a,b)})=(x−a, y−b).I\big(\{(a,b)\}\big)=(x-a,\ y-b).
証明
  1. 右辺 ⊆\subseteq 左辺:x−ax-a と y−by-b は点 (a,b)(a,b) で0になる。
  2. 左辺 ⊆\subseteq 右辺:どんな ff も、x−ax-a と y−by-b で順に割ると、余りが定数 f(a,b)f(a,b) になる。

    ff を xx の多項式とみて x−ax-a で割ると、余りは xx を含まず、x=ax=a を代入した f(a,y)f(a,y) になる。次に f(a,y)f(a,y) を y−by-b で割ると、余りは f(a,b)f(a,b)。まとめると

    f(x,y)=(x−a) g(x,y)+(y−b) h(y)+f(a,b)f(x,y)=(x-a)\,g(x,y)+(y-b)\,h(y)+f(a,b)

    となる多項式 g,hg,h がある。

  3. f∈I({(a,b)})f\in I(\{(a,b)\}) なら f(a,b)=0f(a,b)=0 なので、上の式から f∈(x−a, y−b)f\in(x-a,\ y-b)。

例えば f=x2+y2−1f=x^2+y^2-1 と点 (1,0)(1,0) では、余りの式は次のようになります。

x2+y2−1=(x−1)(x+1)+(y−0)⋅y+0.x^2+y^2-1=(x-1)(x+1)+(y-0)\cdot y+0.

f(1,0)=0f(1,0)=0 なので余りは0で、f∈(x−1, y)f\in(x-1,\ y) が確かめられます。

命題8 [1, 命題1.2, p.4]

(1) I(X)I(X) は根基イデアルである。
(2) X⊆YX\subseteq Y なら I(Y)⊆I(X)I(Y)\subseteq I(X)。
(3) XX がアフィン代数的集合なら V(I(X))=XV(I(X))=X。
(4) 任意のイデアル JJ について J⊆J⊆I(V(J))J\subseteq\sqrt{J}\subseteq I(V(J))。

証明
  1. (1) I(X)I(X) はイデアルである。XX 上で0になる多項式どうしの和も、それに多項式を掛けたものも XX 上で0になる。
  2. (1) I(X)I(X) は根基イデアルである。fm∈I(X)f^m\in I(X) なら XX の各点で f(a)m=0f(a)^m=0 なので、f(a)=0f(a)=0。

    体には零因子がない(0でない元を何回掛けても0にならない)。したがって f(a)≠0f(a)\neq0 なら f(a)m≠0f(a)^m\neq0。

  3. (2) 広い集合 YY の上で0になる式は、その一部 X⊆YX\subseteq Y の上でも0。
  4. (3) X⊆V(I(X))X\subseteq V(I(X)) は定義から分かる。

    a∈Xa\in X なら I(X)I(X) の式はすべて aa で0になるので、a∈V(I(X))a\in V(I(X))。

  5. (3) 逆向きは、X=V(K)X=V(K) と書き、K⊆I(X)K\subseteq I(X) に 命題3(1) を使う。

    KK の元は X=V(K)X=V(K) の上で0なので K⊆I(X)K\subseteq I(X)。命題3(1) で包含を逆にすると V(I(X))⊆V(K)=XV(I(X))\subseteq V(K)=X。

    ここで XX が零点集合であることを使った。一般の部分集合 XX では、V(I(X))V(I(X)) は XX を含む最小のアフィン代数的集合になり、XX より大きくなることがある。

  6. (4) J⊆JJ\subseteq\sqrt{J} は m=1m=1 の場合。fm∈Jf^m\in J なら V(J)V(J) の各点で f(a)m=0f(a)^m=0、よって f(a)=0f(a)=0 なので J⊆I(V(J))\sqrt{J}\subseteq I(V(J))。

命題8(3) により、形 XX は式の集まり I(X)I(X) から復元できます。

VV と II は、イデアルの集まりと An\mathbb{A}^n の部分集合の集まりのあいだを、互いに逆向きに行き来する写像です。

{ J⊆k[x1,…,xn] } ⇄VI { X⊆An }\big\{\,J\subseteq k[x_1,\dots,x_n]\,\big\}\ \underset{I}{\overset{V}{\rightleftarrows}}\ \big\{\,X\subseteq\mathbb{A}^n\,\big\}

左はイデアル全体、右は部分集合全体です。2つの写像は、次の言い換えで結ばれています。

J⊆I(X)⟺X⊆V(J).J\subseteq I(X)\quad\Longleftrightarrow\quad X\subseteq V(J).

どちらの辺も「JJ の式がすべて XX の上で0」という同じ条件だからです。

行って戻ると、一般にはもとより大きくなります。1行目の包含は 命題8(4) そのものです。2行目の V(I(X))⊇XV(I(X))\supseteq X は、XX の点では I(X)I(X) の式がすべて0になることから、そのまま分かります。

J ↦ V  V(J) ↦ I  I(V(J)) ⊇ J ⊇ J,X ↦ I  I(X) ↦ V  V(I(X)) ⊇ X.\begin{aligned} J\ &\xmapsto{\ V\ }\ V(J)\ \xmapsto{\ I\ }\ I(V(J))\ \supseteq\ \sqrt{J}\ \supseteq\ J,\\ X\ &\xmapsto{\ I\ }\ I(X)\ \xmapsto{\ V\ }\ V(I(X))\ \supseteq\ X. \end{aligned}

2行目の包含は、XX がアフィン代数的集合なら等号です。そうでないときも、V(I(X))V(I(X)) は XX を含む最小のアフィン代数的集合です。X⊆V(T)X\subseteq V(T) なら T⊆I(X)T\subseteq I(X) なので、V(I(X))⊆V(T)V(I(X))\subseteq V(T) となるからです。前の節の Z⊆A1\mathbb{Z}\subseteq\mathbb{A}^1(k=Ck=\mathbb{C})では

I(Z)=(0),V(I(Z))=V(0)=A1⊋ZI(\mathbb{Z})=(0),\qquad V\big(I(\mathbb{Z})\big)=V(0)=\mathbb{A}^1\supsetneq\mathbb{Z}

となり、整数の点だけを残すことはできません。

一方、(4) の包含は等号とは限りません。例えば J=(x2)⊆k[x,y,z]J=(x^2)\subseteq k[x,y,z] では V(x2)=V(x)V(x^2)=V(x) で、どちらも yzyz 平面です。kk が無限体なら I(V(x2))=(x)I(V(x^2))=(x) となり、x2x^2 の「2乗」の情報は形からは読み取れません。

例9 2重の平面

kk を無限体とし、J=(x2)⊆k[x,y,z]J=(x^2)\subseteq k[x,y,z] とする。このとき

J=(x2) ⊊ J=(x) = I(V(J)).J=(x^2)\ \subsetneq\ \sqrt{J}=(x)\ =\ I\big(V(J)\big).
証明
  1. V(J)=V(x)V(J)=V(x):体の元 a1a_1 について、a12=0a_1^2=0 と a1=0a_1=0 は同値。
  2. (x)⊆J⊆I(V(J))(x)\subseteq\sqrt{J}\subseteq I(V(J)):x2∈Jx^2\in J と 命題8(4) から。
  3. I(V(x))⊆(x)I(V(x))\subseteq(x):ff を xx で割った余り f(0,y,z)f(0,y,z) が、yzyz 平面のすべての点で0になる多項式なので、0である。

    ff を xx の多項式とみて xx で割ると

    f(x,y,z)=x g(x,y,z)+f(0,y,z).f(x,y,z)=x\,g(x,y,z)+f(0,y,z).

    f∈I(V(x))f\in I(V(x)) なら、すべての (b,c)∈k2(b,c)\in k^2 で f(0,b,c)=0f(0,b,c)=0。kk は無限体なので、2変数の多項式 f(0,y,z)f(0,y,z) は0(上で触れた I(A2)=(0)I(\mathbb{A}^2)=(0))。よって f=xg∈(x)f=xg\in(x)。

  4. J≠(x)J\neq(x):(x2)(x^2) の元は x2x^2 の倍数なので、xx は入らない。

図の上では、「x=0x=0」と「x2=0x^2=0」は同じ平面です。後者は、平面を2重に数えている(平面から xx 方向にほんの少し厚みがある)と考えたくなりますが、点の集合ではこの違いを表せません。

この情報を失わずに形を扱う枠組みが、次回以降に扱うスキームです。

零点定理:形と式がちょうど対応する条件

命題8(4) の包含 J⊆I(V(J))\sqrt{J}\subseteq I(V(J)) は、kk が代数閉体なら等号になります。これがヒルベルトの零点定理です。

定理10 ヒルベルトの零点定理 [1, 定理1.3A, p.4]

kk を代数閉体とする。k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] の任意のイデアル JJ について

I(V(J))=J.I(V(J))=\sqrt{J}.

証明には可換環論の準備が必要なので、この記事では結果だけを使います(証明は [2, 演習問題7.14, p.132; 4, 定理5.4, p.41; 5, 問題3.8 (2), p.89] などにあります)。零点定理(定理10)と命題8を合わせると、次の対応が得られます。

系11 [1, 系1.4, p.5]

kk が代数閉体のとき、VV と II は、k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] の根基イデアル全体と An\mathbb{A}^n のアフィン代数的集合全体のあいだの、互いに逆な1対1対応である。この対応は包含の向きを逆にする。特に、点 a=(a1,…,an)a=(a_1,\dots,a_n) は極大イデアル (x1−a1,…,xn−an)(x_1-a_1,\dots,x_n-a_n) に対応し、極大イデアルはすべてこの形である。

根基イデアル全体を R\mathcal{R}、アフィン代数的集合全体を A\mathcal{A} と書くと、系11は次の図式で表せます。

R ⇄VI A,I∘V=idR,V∘I=idA.\mathcal{R}\ \underset{I}{\overset{V}{\rightleftarrows}}\ \mathcal{A},\qquad I\circ V=\mathrm{id}_{\mathcal{R}},\qquad V\circ I=\mathrm{id}_{\mathcal{A}}.

1つ目の等式が零点定理 I(V(J))=J=JI(V(J))=\sqrt{J}=J、2つ目が命題8(3) です。包含の向きが逆になることは、根基イデアル J,KJ,K について次のように書けます。

J⊆K⟺V(J)⊇V(K).J\subseteq K\quad\Longleftrightarrow\quad V(J)\supseteq V(K).

点と極大イデアルの対応は、代入の写像で見ると分かりやすくなります。点 aa での値を取る写像

eva ⁣:k[x1,…,xn]⟶k,f⟼f(a)\mathrm{ev}_a\colon k[x_1,\dots,x_n]\longrightarrow k,\qquad f\longmapsto f(a)

は全射な環準同型で、その核は Ma=(x1−a1,…,xn−an)M_a=(x_1-a_1,\dots,x_n-a_n) です(n=2n=2 の場合が例7)。準同型定理から

k[x1,…,xn]/Ma ≅ kk[x_1,\dots,x_n]/M_a\ \cong\ k

で、kk は体なので MaM_a は極大イデアルです。ここまではどんな体でも成り立ちます。代数閉体の仮定を使うのは、「極大イデアルはすべてこの形」の部分です。

例えば k=Rk=\mathbb{R} では、(x2+1)⊆R[x](x^2+1)\subseteq\mathbb{R}[x] も極大イデアルです。剰余環は

R[x]/(x2+1) ≅ C,x⟼i\mathbb{R}[x]/(x^2+1)\ \cong\ \mathbb{C},\qquad x\longmapsto i

で体ですが、このイデアルに対応する実数の点はありません。

この対応を概念図にしたのが図5です。k[x,y]k[x,y] のイデアルのいくつかと、A2\mathbb{A}^2 の部分集合を、2枚の面に分けて並べています。

ドラッグで回せます

手前の面の各イデアル JJ から、零点集合 V(J)V(J) へ青い矢印を引いています。(x2)(x^2) と (x)(x) は同じ V(x)V(x) に送られるので、VV は1対1ではありません。

奥の面の各集合 XX から、I(X)I(X) へ緑の矢印を引いています。I(X)I(X) はいつも根基イデアルなので(命題8)、矢印はすべて黒い点に戻り、オレンジの点には戻りません。

(x2)(x^2) から VV で進み II で戻ると、(x)=(x2)(x)=\sqrt{(x^2)} に着きます。これが零点定理 I(V(J))=JI(V(J))=\sqrt{J} です。「正面」から見ると、根基イデアルは自分の零点集合とちょうど重なり、根基でない (x2)(x^2)、(y2)(y^2) だけがはみ出します。

図5概念図手前の面の点はイデアル、奥の面の点はアフィン代数的集合を表します。灰色の線は包含です。手前の面では小さいイデアルほど下に、奥の面では大きい集合ほど下に置いています。VV は包含の向きを逆にするので、こう置くと、対応するイデアルと集合が同じ高さに並びます。青い矢印は VV、緑の矢印は II で、オレンジの点は根基イデアルでないイデアルです。点の位置は座標ではなく、並べ方だけが意味をもちます。

図5を「正面」から見ると、手前の面と奥の面が重なります。根基イデアルの点は、その零点集合の点とぴったり重なります。系11の1対1対応が、そのまま点の重なりとして見えるわけです。

重ならないのは (x2)(x^2) と (y2)(y^2) だけで、そこから出る VV の矢印は斜めに進み、根基 (x)(x)、(y)(y) の零点集合に着きます。

図5に描いたイデアルとその零点集合を並べると、次のとおりです。上の6つが根基イデアルで、系11の対応の一部になっています。

(0)⟷A2(xy)⟷V(x)∪V(y)(x)⟷V(x)(y)⟷V(y)(x, y)⟷{(0,0)}(1)⟷∅(x2)↦ V V(x)(y2)↦ V V(y)\begin{array}{rcl} (0) & \longleftrightarrow & \mathbb{A}^2 \\ (xy) & \longleftrightarrow & V(x)\cup V(y) \\ (x) & \longleftrightarrow & V(x) \\ (y) & \longleftrightarrow & V(y) \\ (x,\ y) & \longleftrightarrow & \{(0,0)\} \\ (1) & \longleftrightarrow & \varnothing \\[4pt] (x^2) & \xmapsto{\ V\ } & V(x) \\ (y^2) & \xmapsto{\ V\ } & V(y) \end{array}

下の2つは根基イデアルではないので、VV で送ることはできても、II で戻ってきません。V(x)V(x) から II で戻ると (x2)=(x)\sqrt{(x^2)}=(x) に着きます。

零点定理の具体例として、放物線とその接線の交わりを見ます。根基イデアルどうしの和が、根基イデアルになるとは限らない例でもあります。

例12 放物線と接線

kk を代数閉体とし、k[x,y]k[x,y] で J=(y−x2)J=(y-x^2)、K=(y)K=(y) とする。このとき

J+K=(x2, y),V(J)∩V(K)={(0,0)},I(V(J+K))=J+K=(x, y)⊋J+K.\begin{gathered} J+K=(x^2,\ y),\qquad V(J)\cap V(K)=\{(0,0)\},\\ I\big(V(J+K)\big)=\sqrt{J+K}=(x,\ y)\supsetneq J+K. \end{gathered}
証明
  1. J+K=(y−x2, y)=(x2, y)J+K=(y-x^2,\ y)=(x^2,\ y):生成元を互いに書き直せる。
    x2=y−(y−x2),y−x2=1⋅y−1⋅x2.x^2=y-(y-x^2),\qquad y-x^2=1\cdot y-1\cdot x^2.

    1つ目の式から x2∈J+Kx^2\in J+K。2つ目の式から y−x2∈(x2,y)y-x^2\in(x^2,y)。yy は両方に共通の生成元。

  2. V(x2,y)={(0,0)}V(x^2,y)=\{(0,0)\}:a2=0a^2=0 なら a=0a=0。
  3. (x2,y)=(x,y)\sqrt{(x^2,y)}=(x,y):x∈(x2,y)x\in\sqrt{(x^2,y)} で、(x,y)(x,y) は (x2,y)(x^2,y) を含む素イデアルだから。零点定理から I(V(J+K))I(V(J+K)) もこれに等しい。
  4. x∉(x2,y)x\notin(x^2,y):(x2,y)(x^2,y) の元に y=0y=0 を代入すると x2x^2 の倍数になるが、xx はそうならない。

形の上では、放物線と接線は原点の1点で交わるだけです。イデアルの側に残った x2x^2 は、2つの曲線が原点で接している(重解をもつ)ことを表しています。点の集合 {(0,0)}\{(0,0)\} からは、この接し方の情報は消えます。

kk が代数閉体なら、零点定理から、零点集合が空になる条件も分かります。V(J)=∅V(J)=\varnothing なら J=I(∅)=(1)\sqrt{J}=I(\varnothing)=(1) なので、ある mm で 1=1m∈J1=1^m\in J、つまり J=(1)J=(1) です。

V(J)=∅⟺1∈J.V(J)=\varnothing\quad\Longleftrightarrow\quad 1\in J.

⇐\Leftarrow はどんな体でも成り立ちます(V(1)=∅V(1)=\varnothing)。⇒\Rightarrow が零点定理の内容で、解のない連立方程式には、式を組み合わせて1を作る「証拠」が必ずあるということです。

  • 半径の違う同心円 V(x2+y2−1)V(x^2+y^2-1) と V(x2+y2−2)V(x^2+y^2-2) は交わりません。証拠は差を取るだけで得られます。 (x2+y2−1)−(x2+y2−2)=1.(x^2+y^2-1)-(x^2+y^2-2)=1.
  • 双曲線 V(xy−1)V(xy-1) と yy 軸 V(x)V(x) は交わりません。証拠は次の式です。 y⋅x−(xy−1)=1.y\cdot x-(xy-1)=1.

代数閉体という条件は外せません。k=Rk=\mathbb{R} で J=(x2+1)⊆R[x]J=(x^2+1)\subseteq\mathbb{R}[x] とすると、V(J)=∅V(J)=\varnothing なので I(V(J))=R[x]I(V(J))=\mathbb{R}[x] です。一方 x2+1x^2+1 は既約なので J=J≠R[x]\sqrt{J}=J\neq\mathbb{R}[x] で、等号が成り立ちません。

I(V(x2+1))=I(∅)=R[x] ≠ (x2+1)=(x2+1).I\big(V(x^2+1)\big)=I(\varnothing)=\mathbb{R}[x]\ \neq\ (x^2+1)=\sqrt{(x^2+1)}.

上の「V(J)=∅V(J)=\varnothing なら 1∈J1\in J」もこの例で崩れます。1∉(x2+1)1\notin(x^2+1) なので、1を作る証拠はありません。

実数の範囲では、解のない方程式の零点集合はどれも空集合になるので、式の違いが形に現れません[1, 例1.4.5, p.6]。

既約成分:形を部品に分ける

図4の V(xz,yz)V(xz,yz) は、平面と直線という2つの部品からできていました。これ以上分けられない部品を、次のように定義します。

定義13 既約 [1, §I.1 定義, p.3]

空でないアフィン代数的集合 XX が既約であるとは、X=X1∪X2X=X_1\cup X_2(X1,X2X_1,X_2 はアフィン代数的集合)と書けば必ず X=X1X=X_1 または X=X2X=X_2 となることをいう。既約なアフィン代数的集合をアフィン多様体と呼ぶ。

命題14 [1, 系1.4, p.5]

アフィン代数的集合 XX が既約であることと、I(X)I(X) が素イデアルであることは同値である。

証明
  1. (既約 ⇒ 素)fg∈I(X)fg\in I(X) なら X=(X∩V(f))∪(X∩V(g))X=\big(X\cap V(f)\big)\cup\big(X\cap V(g)\big) と分けられる。既約性から一方が XX 全体になり、f∈I(X)f\in I(X) か g∈I(X)g\in I(X) が分かる。
    1. I(X)I(X) は環全体ではない。X≠∅X\neq\varnothing なので、定数1は XX 上で0にならない。
    2. XX の各点で f(a)g(a)=0f(a)g(a)=0 なので、f(a)=0f(a)=0 か g(a)=0g(a)=0。これが上の分解である。
    3. 右辺の2つはどちらもアフィン代数的集合である(命題5(1))。XX は既約なので、例えば X=X∩V(f)X=X\cap V(f)。これは ff が XX 上で0、つまり f∈I(X)f\in I(X) ということ。
  2. (素 ⇒ 既約)X=X1∪X2X=X_1\cup X_2、X1≠XX_1\neq X、X2≠XX_2\neq X と仮定する。I(X)I(X) に入らない f,gf,g で fg∈I(X)fg\in I(X) となるものが作れ、I(X)I(X) が素であることに反する。
    1. X≠∅X\neq\varnothing。I(X)I(X) は素イデアルなので環全体ではなく、一方 I(∅)I(\varnothing) は環全体だからである。
    2. I(X)⊊I(Xi)I(X)\subsetneq I(X_i)。

      Xi⊆XX_i\subseteq X なので、命題8(2) から I(X)⊆I(Xi)I(X)\subseteq I(X_i)。等号が成り立つとすると、命題8(3) から Xi=V(I(Xi))=V(I(X))=XX_i=V(I(X_i))=V(I(X))=X となり、仮定に反する。

    3. f∈I(X1)∖I(X)f\in I(X_1)\setminus I(X) と g∈I(X2)∖I(X)g\in I(X_2)\setminus I(X) を選ぶ。
    4. fgfg は X1X_1 の上でも X2X_2 の上でも0なので、X1∪X2=XX_1\cup X_2=X の上で0。つまり fg∈I(X)fg\in I(X) だが、f,g∉I(X)f,g\notin I(X)。

既約でない例として、A2\mathbb{A}^2 の2本の座標軸 X=V(xy)=V(x)∪V(y)X=V(xy)=V(x)\cup V(y) を見ます。証明の前半と同じく、積 xyxy から XX の分け方が分かります。

x⋅y∈I(X),x∉I(X),y∉I(X).x\cdot y\in I(X),\qquad x\notin I(X),\qquad y\notin I(X).

xx は XX の点 (1,0)(1,0) で1になり、yy は XX の点 (0,1)(0,1) で1になるので、どちらも I(X)I(X) に入りません。したがって I(X)I(X) は素イデアルではありません。

形の側では、XX は V(x)V(x) と V(y)V(y) という、どちらも XX より小さい2つに分かれます。

さらに、どのアフィン代数的集合も、有限個のアフィン多様体の和集合 X=X1∪⋯∪XrX=X_1\cup\dots\cup X_r に書け、余分なもの(他に含まれる XiX_i)を除けば、この書き方は順番を除いて一通りです[1, 命題1.5, p.6; 1, 系1.6, p.7]。各 XiX_i を XX の既約成分と呼びます。

kk が無限体なら、V(xz,yz)V(xz,yz) の既約成分は、平面 V(z)V(z) と直線 V(x,y)V(x,y) です。I(V(z))=(z)I(V(z))=(z) と I(V(x,y))=(x,y)I(V(x,y))=(x,y) は、剰余環が整域なので素イデアルです。

k[x,y,z]/(z)≅k[x,y],k[x,y,z]/(x, y)≅k[z].k[x,y,z]/(z)\cong k[x,y],\qquad k[x,y,z]/(x,\ y)\cong k[z].

(I(V(z))=(z)I(V(z))=(z) は例9と同じ割り算で、I(V(x,y))=(x,y)I(V(x,y))=(x,y) も同様に示せます。どちらも kk が無限体であることを使います。)

イデアルの側では

(xz, yz)=(z)∩(x,y)(xz,\ yz)=(z)\cap(x,y)

が成り立ち、これは形の分解 V(xz,yz)=V(z)∪V(x,y)V(xz,yz)=V(z)\cup V(x,y) をそのまま式に書いたものです。2つの向きの包含は、次のように確かめられます。

  • ⊆\subseteq:生成元 xz, yzxz,\ yz は zz の倍数で、xx か yy の倍数でもあるので、両方のイデアルに入ります。
  • ⊇\supseteq:f∈(z)∩(x,y)f\in(z)\cap(x,y) を f=zgf=zg と書きます。zg∈(x,y)zg\in(x,y) で z∉(x,y)z\notin(x,y) なので、素イデアルの性質から g∈(x,y)g\in(x,y)、つまり g=xp+yqg=xp+yq です。よって f=zg=p⋅xz+q⋅yz∈(xz, yz).f=zg=p\cdot xz+q\cdot yz\in(xz,\ yz).

例15 直線と離れた1点

k[x,y]k[x,y] で J=(x2−x, xy)J=(x^2-x,\ xy) とすると、

V(J)=V(x)∪{(1,0)},J=(x)∩(x−1, y).V(J)=V(x)\cup\{(1,0)\},\qquad J=(x)\cap(x-1,\ y).
証明
  1. 点 (a,b)(a,b) が V(J)V(J) に入る条件を、a(a−1)=0a(a-1)=0 から a=0a=0 と a=1a=1 に分けて調べる。
    1. a=0a=0 のとき:ab=0ab=0 は自動的にみたされるので、bb は何でもよい。これが直線 V(x)V(x)。
    2. a=1a=1 のとき:ab=b=0ab=b=0 なので、点 (1,0)(1,0) だけ。
  2. J⊆(x)∩(x−1,y)J\subseteq(x)\cap(x-1,y):x2−x=x(x−1)x^2-x=x(x-1) と xyxy は xx の倍数で、x−1x-1 か yy の倍数でもある。
  3. J⊇(x)∩(x−1,y)J\supseteq(x)\cap(x-1,y):f=xgf=xg が (x−1,y)(x-1,y) に入れば g∈(x−1,y)g\in(x-1,y) で、f∈Jf\in J。

    (x−1,y)(x-1,y) は点 (1,0)(1,0) の極大イデアルなので素イデアルで、xx は (1,0)(1,0) で1なので入らない。よって g∈(x−1,y)g\in(x-1,y)、g=(x−1)p+yqg=(x-1)p+yq と書けて

    f=xg=p⋅(x2−x)+q⋅xy∈J.f=xg=p\cdot(x^2-x)+q\cdot xy\in J.

kk が無限体なら、既約成分は直線 V(x)V(x) と点 {(1,0)}\{(1,0)\} です。既約成分どうしの「大きさ」(次元)が違っていてもかまいません。

3つ以上に分かれる例も、同じように場合分けで計算できます。A3\mathbb{A}^3 の V(xy, yz, zx)V(xy,\ yz,\ zx) では、3つの積がすべて0なので、x,y,zx,y,z のうち少なくとも2つが0です。

V(xy, yz, zx)=V(y,z)∪V(z,x)∪V(x,y).V(xy,\ yz,\ zx)=V(y,z)\cup V(z,x)\cup V(x,y).

右辺は順に xx 軸、yy 軸、zz 軸で、kk が無限体なら、これが3つの既約成分です。

図4で「真上」から見たとき見えなくなったのは、既約成分の一つ丸ごとでした。

また、ff が既約多項式なら、k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] は一意分解整域なので (f)(f) は素イデアルです。kk が代数閉体なら、零点定理から I(V(f))=(f)=(f)I(V(f))=\sqrt{(f)}=(f) となるので、V(f)V(f) は既約です。k=Ck=\mathbb{C} のとき、図1の平面、球面、円錐、鞍面はどれもアフィン多様体です[1, 例1.4.3, p.5]。

代数閉体の仮定は、I(V(f))=(f)I(V(f))=(f) のところで使っています。k=Rk=\mathbb{R} では x2+y2+1x^2+y^2+1 は既約多項式ですが、V(x2+y2+1)=∅V(x^2+y^2+1)=\varnothing は空なので、既約ではありません。

例16 自分と交わる曲線

kk を代数閉体とする。f=y2−x2(x+1)f=y^2-x^2(x+1) は既約多項式で、V(f)⊆A2V(f)\subseteq\mathbb{A}^2 は既約である。

証明
  1. ff を yy の2次式とみる。f=ghf=gh と分解すれば、gg か hh は yy について1次で、ff は k[x]k[x] の中に yy の根 α(x)\alpha(x) をもつ。

    ff の y2y^2 の係数は1。gg が yy を含まなければ、gg は係数1を割り切るので定数になる。よって g,hg,h はどちらも yy について1次で、g=g1y+g0g=g_1y+g_0(g1,g0∈k[x]g_1,g_0\in k[x])と書くと、y2y^2 の係数を比べて g1g_1 は0でない定数。α=−g0/g1\alpha=-g_0/g_1 とすればよい。

  2. 根 α\alpha は α2=x2(x+1)\alpha^2=x^2(x+1) をみたすが、左辺の次数は偶数、右辺の次数は3なので、ありえない。
  3. よって ff は既約で、上の段落のとおり V(f)V(f) は既約。

k=Rk=\mathbb{R} で描くと、この曲線は原点で自分自身と交わり、原点の近くでは2本の直線 y=±xy=\pm x が交わっているように見えます(xx が小さいと x+1≈1x+1\approx1 で、y2≈x2y^2\approx x^2 だからです)。それでも、全体としては1つの部品で、2つのアフィン代数的集合には分かれません。実数でもこう言えるのは、V(f)V(f) の点がすべて (t2−1, t3−t)(t^2-1,\ t^3-t) の形に書けるからです。V(f)V(f) の上で0になる多項式 gg は g(t2−1, t3−t)=0g(t^2-1,\ t^3-t)=0(tt の多項式として0)をみたし、そのような gg は ff の倍数になるので、I(V(f))=(f)I(V(f))=(f) は素イデアルです(無限体ならいつでも成り立ちます)。この点が、本当に2つに分かれていた図4の平面と直線との違いです。

影を見る:射影と変数の消去

最後に、「ある向きから見る」ことを数式で表します。正射影で xx 軸の方向から見ることは、点 (x,y,z)(x,y,z) を (y,z)(y,z) に送る写像 πyz:A3→A2\pi_{yz}:\mathbb{A}^3\to\mathbb{A}^2 で、形を写すことです。

例として、ねじれ3次曲線

C=V(y−x2, z−x3)={ (t, t2, t3)∣t∈k }C=V(y-x^2,\ z-x^3)=\{\,(t,\ t^2,\ t^3)\mid t\in k\,\}

を考えます(2つの式から yy と zz が xx で決まるので、t=xt=x とおけば右の形になります)。

直線 A1\mathbb{A}^1 から CC を通って影へ進む写像の列で書くと、次のとおりです。

A1⟶C→ πyz A2,t⟼(t, t2, t3)⟼(t2, t3).\mathbb{A}^1\longrightarrow C\xrightarrow{\ \pi_{yz}\ }\mathbb{A}^2,\qquad t\longmapsto(t,\ t^2,\ t^3)\longmapsto(t^2,\ t^3).

例えば t=2t=2 の点 (2,4,8)(2,4,8) は (4,8)(4,8) に写り、t=−1t=-1 の点 (−1,1,−1)(-1,1,-1) は (1,−1)(1,-1) に写ります。

ドラッグで回せます

曲線 C=V(y−x2, z−x3)C=V(y-x^2,\ z-x^3) は、点 (t,t2,t3)(t,t^2,t^3) の軌跡です。3枚の壁には、CC をそれぞれの軸の方向に正射影した影を描いています。

zz 軸の方向から見ると、zz 座標が見えなくなり、影 y=x2y=x^2(放物線)と重なります。

yy 軸の方向から見ると、影 z=x3z=x^3 と重なります。

xx 軸の方向から見ると、影 y3=z2y^3=z^2 と重なり、原点に尖った点が現れます。空間の中の CC は滑らかなのに、影は尖ります。

図6具体例ねじれ3次曲線 CC(オレンジ)と、3つの座標平面への影。ボタンを押すと、その軸の方向から見た向きまで回ります。カメラは正射影なので、軸の方向から見た CC は影とぴったり重なります。xx 軸の方向から見ると、滑らかな曲線が尖った曲線に見えます。

命題17

どんな体 kk でも、πyz(C)=V(y3−z2)⊆A2\pi_{yz}(C)=V(y^3-z^2)\subseteq\mathbb{A}^2。

証明
  1. πyz(C)⊆V(y3−z2)\pi_{yz}(C)\subseteq V(y^3-z^2):CC の点の像は (t2,t3)(t^2,t^3) で、(t2)3=t6=(t3)2(t^2)^3=t^6=(t^3)^2。
  2. 逆に、b3=c2b^3=c^2 をみたす点 (b,c)(b,c) が像に入ることを、b=0b=0 と b≠0b\neq0 に分けて示す。
    1. b=0b=0 のとき:c2=0c^2=0 なので c=0c=0 で、(0,0)=πyz(0,0,0)(0,0)=\pi_{yz}(0,0,0)。
    2. b≠0b\neq0 のとき:t=c/bt=c/b とおくと t2=bt^2=b、t3=ct^3=c となり、(b,c)=πyz(t,t2,t3)(b,c)=\pi_{yz}(t,t^2,t^3)。

      c2=b3≠0c^2=b^3\neq0 なので c≠0c\neq0。b3=c2b^3=c^2 を使うと

      t2=c2b2=b3b2=b,t3=c3b3=c3c2=c.t^2=\frac{c^2}{b^2}=\frac{b^3}{b^2}=b,\qquad t^3=\frac{c^3}{b^3}=\frac{c^3}{c^2}=c.

命題17を図式で書くと次のようになります。横の矢印は包含、縦の矢印は射影です。

C→ ⊆ A3πyz↓↓πyzV(y3−z2)→ ⊆ A2\begin{CD} C @>{\ \subseteq\ }>> \mathbb{A}^3 \\ @V{\pi_{yz}}VV @VV{\pi_{yz}}V \\ V(y^3-z^2) @>{\ \subseteq\ }>> \mathbb{A}^2 \end{CD}

左の縦の矢印は全射です。上で見た t=2t=2 の例では、43=64=824^3=64=8^2 で、確かに (4,8)(4,8) は V(y3−z2)V(y^3-z^2) の点です。

この影の方程式は、イデアルの計算からも出てきます。J=(y−x2, z−x3)J=(y-x^2,\ z-x^3) とすると、

y3−z2=(y−x2)(y2+x2y+x4)−(z−x3)(z+x3)∈J∩k[y,z].y^3-z^2=(y-x^2)(y^2+x^2y+x^4)-(z-x^3)(z+x^3)\in J\cap k[y,z].

右辺を展開すると、xx を含む項が打ち消し合います。

(y−x2)(y2+x2y+x4)=y3−x6,(z−x3)(z+x3)=z2−x6.\begin{aligned} (y-x^2)(y^2+x^2y+x^4)&=y^3-x^6,\\ (z-x^3)(z+x^3)&=z^2-x^6. \end{aligned}

JJ の元のうち xx を含まないものを取り出すこと(変数の消去)が、xx 軸の方向から見た影の方程式を与えています。実際、次の例のとおり J∩k[y,z]=(y3−z2)J\cap k[y,z]=(y^3-z^2) が成り立ちます[6]。

例18 消去イデアルの計算

どんな体 kk でも、J=(y−x2, z−x3)⊆k[x,y,z]J=(y-x^2,\ z-x^3)\subseteq k[x,y,z] について

J∩k[y,z]=(y3−z2).J\cap k[y,z]=(y^3-z^2).
証明
  1. ⊇\supseteq:上の恒等式から y3−z2∈Jy^3-z^2\in J。
  2. f∈k[x,y,z]f\in k[x,y,z] が JJ に入るのは、f(t,t2,t3)f(t,t^2,t^3) が k[t]k[t] の多項式として0のときである。

    y≡x2y\equiv x^2、z≡x3(modJ)z\equiv x^3\pmod J なので、f(x,y,z)≡f(x,x2,x3)(modJ)f(x,y,z)\equiv f(x,x^2,x^3)\pmod J。右辺は xx だけの多項式で、JJ の元に y=x2, z=x3y=x^2,\ z=x^3 を代入すると0になる。したがって f∈Jf\in J と f(x,x2,x3)=0f(x,x^2,x^3)=0 は同値で、xx を tt と書けばよい。

  3. f∈J∩k[y,z]f\in J\cap k[y,z] を z2−y3z^2-y^3 で(zz の多項式として)割り、余りを A(y)+z B(y)A(y)+z\,B(y) と書く。余りも JJ に入る。
  4. 余りに y=t2, z=t3y=t^2,\ z=t^3 を代入した A(t2)+t3B(t2)A(t^2)+t^3B(t^2) は0。前半は偶数次、後半は奇数次の項だけなので、A=B=0A=B=0。よって f∈(y3−z2)f\in(y^3-z^2)。

同じように zz を消去すると y−x2y-x^2、yy を消去すると z−x3z-x^3 が残り、図6の残りの2つの影になります。

J∩k[x,y]=(y−x2),J∩k[x,z]=(z−x3).J\cap k[x,y]=(y-x^2),\qquad J\cap k[x,z]=(z-x^3).

どちらも、上の例の2つ目のステップと同じ代入で確かめられます。

環の側では、射影 πyz\pi_{yz} は包含 k[y,z]⊆k[x,y,z]k[y,z]\subseteq k[x,y,z] に対応し、矢印の向きが逆になります。y,zy,z だけの多項式 gg を、πyz\pi_{yz} で引き戻して A3\mathbb{A}^3 の上の多項式 g∘πyzg\circ\pi_{yz} とみる、という対応です。この包含から、剰余環のあいだの準同型が作れます。

k[y,z]→ ⊆ k[x,y,z]↓↓k[y,z]/(y3−z2)→k[x,y,z]/J\begin{CD} k[y,z] @>{\ \subseteq\ }>> k[x,y,z] \\ @VVV @VVV \\ k[y,z]/(y^3-z^2) @>>> k[x,y,z]/J \end{CD}

縦の矢印は剰余環への写像です。下の横の矢印の核は (J∩k[y,z])/(y3−z2)(J\cap k[y,z])/(y^3-z^2) なので、例18から単射です。k[x,y,z]/J≅k[t]k[x,y,z]/J\cong k[t](x↦tx\mapsto t)と合わせると、下の矢印は y↦t2, z↦t3y\mapsto t^2,\ z\mapsto t^3 で、像は t2t^2 と t3t^3 が生成する部分環 k[t2,t3]k[t^2,t^3] です。

部分集合のイデアル II についても、射影と消去は、どんな体でも次の等式で結ばれています。XX は A3\mathbb{A}^3 の任意の部分集合です。

I(πyz(X))=I(X)∩k[y,z].I\big(\pi_{yz}(X)\big)=I(X)\cap k[y,z].

g∈k[y,z]g\in k[y,z] が πyz(X)\pi_{yz}(X) の上で0であることと、gg を3変数の多項式とみて XX の上で0であることは同じだからです。

kk が無限体なら I(C)=JI(C)=J なので(例18の2つ目のステップと、無限個の tt で0になる1変数多項式は0であることから)、右辺は J∩k[y,z]=(y3−z2)J\cap k[y,z]=(y^3-z^2) になります。

空間の中の CC は、どの点でも尖っていません。それでも xx 軸の方向からの影は原点で尖ります。尖った点(特異点)を正確に定義するのは後の回ですが、「滑らかな曲線の影が特異点をもつ」ことは、図6を回すと見て取れます。

専門的な話影はいつも零点集合になるか

なりません。双曲線 V(xy−1)⊆A2V(xy-1)\subseteq\mathbb{A}^2 を xx 軸に射影すると、像は {x≠0}\{x\neq0\} です。kk が無限体なら、これは A1\mathbb{A}^1 のアフィン代数的集合ではありません(有限集合でも全体でもない)。

πx(V(xy−1))={ a∈k∣a≠0 }=A1∖{0}.\pi_x\big(V(xy-1)\big)=\{\,a\in k\mid a\neq0\,\}=\mathbb{A}^1\setminus\{0\}.

a≠0a\neq0 なら点 (a,1/a)(a,1/a) が aa に写ります。a=0a=0 の上には、0⋅y−1=−1≠00\cdot y-1=-1\neq0 なので双曲線の点がありません。

消去イデアルのほうは (xy−1)∩k[x]=(0)(xy-1)\cap k[x]=(0) です。xy−1xy-1 の0でない倍数は、yy について1次以上の項を必ず含むからです。その零点集合は V(0)=A1V(0)=\mathbb{A}^1 で、像に原点を1点足したものになっています。

一般には、kk が代数閉体なら、消去イデアルの零点集合 V(J∩k[xl+1,…,xn])V(J\cap k[x_{l+1},\dots,x_n]) は、射影の像を含む最小のアフィン代数的集合(ザリスキー位相での閉包)になります。これを閉包定理と呼びます[6]。

双曲線では、A1∖{0}\mathbb{A}^1\setminus\{0\} を含む最小のアフィン代数的集合が A1\mathbb{A}^1 です。ねじれ3次曲線では、像そのものがすでに閉じていました。

代数閉体の仮定は外せません。k=Rk=\mathbb{R} で J=(x2+y2+1)J=(x^2+y^2+1) とすると、同じ理由で J∩R[x]=(0)J\cap\mathbb{R}[x]=(0)、V(0)=RV(0)=\mathbb{R} ですが、V(J)V(J) は空なので像も空です。

まとめ:形と式の辞書

この記事で見た対応を表にまとめます。「対象」「包含」「部品」「点」の行は、kk が代数閉体のとき1対1の対応です。

「共通部分」「和集合」の行は VV で移した形が一致するという意味で、根基イデアルの範囲で言い直すと、共通部分は J+K\sqrt{J+K}、和集合は J∩KJ\cap K(J,KJ,K が根基イデアルのとき)に対応します。

根基イデアルどうしの和は、根基イデアルとは限りません。例12では J+K=(x2,y)J+K=(x^2,y) で、対応する根基イデアルは J+K=(x,y)\sqrt{J+K}=(x,y) でした。

「影」の行は、像そのものではなく像の閉包に対応します。双曲線の影 A1∖{0}\mathbb{A}^1\setminus\{0\} に対応するのは、その閉包 A1\mathbb{A}^1 です。

形(An\mathbb{A}^n の部分集合)式(k[x1,…,xn]k[x_1,\dots,x_n] のイデアル)
全体と空An\mathbb{A}^n、∅\varnothing(0)(0)、(1)(1)
対象アフィン代数的集合根基イデアル
包含X⊆YX\subseteq YI(X)⊇I(Y)I(X)\supseteq I(Y)(向きが逆)
共通部分V(J)∩V(K)V(J)\cap V(K)和 J+KJ+K
和集合V(J)∪V(K)V(J)\cup V(K)積 JKJK、共通部分 J∩KJ\cap K
部品既約(アフィン多様体)素イデアル
点{a}\{a\}極大イデアル (x1−a1,…,xn−an)(x_1-a_1,\dots,x_n-a_n)
影座標への射影変数の消去 J∩k[xl+1,…,xn]J\cap k[x_{l+1},\dots,x_n]

次回:点を増やす

辞書の表には、気になる点が2つ残っています。

  • 点に対応するのは極大イデアルだけです。素イデアル (x,y)⊆k[x,y,z](x,y)\subseteq k[x,y,z] は直線 zz 軸に対応し、1点には対応しません。
  • 形からは xx と x2x^2 の違いが分かりません。根基イデアルでないイデアルは、表のどこにも現れません。

スキームの理論では、素イデアルをすべて「点」とみなして、環 AA から空間 Spec⁡A\operatorname{Spec}A を作ります。すると zz 軸全体に対応する点(生成点)が現れ、k[x]/(x2)k[x]/(x^2) のような環も「厚みのある点」として扱えるようになります。

次回は Spec⁡Z\operatorname{Spec}\mathbb{Z}、Spec⁡k[x]\operatorname{Spec}k[x]、Spec⁡k[x,y]\operatorname{Spec}k[x,y]、Spec⁡k[x]/(x2)\operatorname{Spec}k[x]/(x^2)、Spec⁡Z[x]\operatorname{Spec}\mathbb{Z}[x] などの例を図で比べながら、生成点がどこにあり、何を表しているのかを見ます。その先では、前層と層、茎と芽を扱う予定です[7]。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. M. F. アティヤ, I. G. マクドナルド(新妻弘 訳), 『可換代数入門』, 共立出版, 2006.
  3. 堀田良之, 『可換環と体』, 岩波書店, 2006.
  4. 松村英之, 『復刊 可換環論』, 共立出版, 2000.
  5. 後藤四郎, 渡辺敬一, 『可換環論』, 日本評論社, 2011.
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